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子どものための素敵な小曲 No.46〜No.50


なんとか50曲!ということで、今回はコンサートでも弾かれる有名な小品を

ピックアップしてみました。子どもが演奏するための、というよりまずは、

子どもに聴いてほしい、一緒に聴きたい作品です。

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No.46は、ドヴォルザーク作曲、ユモレスク第7番

ドヴォルザークは後期ロマン派のチェコの作曲家です。

民謡の旋律・民俗舞曲のリズムから発想を得た作品を多く残したため、

国民楽派と呼ばれます。新世界より「家路」などは有名ですね。

このユモレスクも、たまにテレビなどで使用されています。 付点のリズムが温かでちょっとユーモラスな雰囲気を醸し出している冒頭、

中間部は短調になり打って変わってぐっと集中した想いを歌い上げる感じ、

最後はまた最初と同じユーモラスなメロディが戻ってきて、最後は唐突に、

そしてちょっとお茶目(これは個人的意見です^^;)に終わります。


余談ですが、東京にいる時にエフゲニー・キーシンのショパンのバラード・スケルツォ

全曲演奏会に行って、最初のアンコールがこのユモレスクだったのを鮮明に覚えています。 濃度の高い曲を続けて聴いた後で、この曲の冒頭が聞こえた時、ちょっとの笑いと

どよめきが起こり会場が一斉に緩んだのが感じられました。

あの時のキーシンのユモレスク、あと羽田健太郎さんが演奏しているユモレスクも

私は大好きです。





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No.47は、誰もが絶対耳にしたことのある曲です。ドビュッシーの「月の光」。


ドビュッシーは1862年に生まれたフランスの作曲家です。

もう一昨年のことになってしまいましたが、ドビュッシーの没後100年(1918年没)の

アニバーサリー・イヤーで、ドビュッシーを取り上げたコンサートなどが多く開催されて

いました。100年というと、まだそんなに遠くない感じがしますね。

私の祖母は大正生まれだったので、曾祖母が生きていた時代には

ドビュッシーも生きていたと思うと、なんだか不思議な気がします。


この「月の光」はベルガマスク組曲という4曲からなる組曲の中の第3曲です。

曲の最初に pp(とても小さく)とuna corda(弱音ペダルを踏む)の指示があり、

その後も p や ppp の指示があるだけで f(強く)はひとつも出てきません。

全体的に静かな世界のお話です。

静かな世界だけれど、決して「弱い」一色ではなくて、色んな陰影があったり、

余白のような空間があって、とても立体的な響きがします。よく耳を澄ませて、

音が消え入るその瞬間まで聞き取りたくなる繊細な美しさ。弾けば弾くほど、

魅力的な曲だなぁと思います。


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No.48は、モーツァルト作曲のピアノソナタ第11番の第3楽章、

通称「トルコ行進曲」を紹介します。

この曲は「トルコ行進曲」という独立した曲ではなくて、実はソナタの中の

1つの楽章です。ピアノソナタ第11番は1楽章が変奏曲形式で、2楽章がメヌエット、

3楽章が「Alla Turca(トルコ風に)」と指示があり、ソナタなのにソナタ形式を含まない

という珍しい形をとっています。このトルコ風の3楽章が、人気が高く単独で演奏される

ことも多いため、「トルコ行進曲」と呼ばれるようになりました。

写真はトルコで伝統的に行われてきた、「メフテル」と呼ばれる軍楽の様子です。

笛やラッパ、太鼓、シンバルなどの編成で、規則正しいリズムを打ち鳴らすのが特徴です。

このメフテルの(主に打楽器の)響きをモーツァルトは模倣しました。

左手が和音をバラして弾く部分は、メフテルの打楽器群に負けない迫力が出ていると

思いますがどうでしょう。

今も昔も人気の高い「トルコ行進曲」ですが、本当のところ私はちょっと

苦手だったりします。というのも、こういうトルコ風の音楽は、まじめな芸術音楽

というよりも、一般受けを狙った「ネタ」的要素をもった音楽だからです。

どう考えてどう弾くか、演奏者で意見が分かれるところじゃないかと思います。

短い曲なので、色々な人のトルコ行進曲を聴き比べてみるのも面白いかも知れません。


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No.49は、リストの「愛の夢 第3番」。

本当は、第5回レクチャーコンサートで聞いてもらう予定だったのですが、

新型コロナウイルスの拡大防止のため演奏会が延期になり、代わりに会場で撮った動画

を公開することにしました。


元々「愛の夢」はソプラノの独唱歌曲として作曲されましたが、

リストが39歳の時にピアノ独奏曲として編曲されました。

「3つのノクターン」という副題が付けられており、第1番、第2番、第3番と3曲あります。

第3番の原曲は、フェルディナント・フライヒラートの

「O lieb so lang du lieben kannst(おお、愛しうる限り愛せ)」という詩に曲をつけた

もので、死んでからでは愛を伝えても遅い、彼がいるうちにできる限り愛しなさいと

訴える歌詞になっています。

この曲が作曲されたのはショパンが亡くなってから1年後。

副題につけた「ノクターン」は、ショパンが得意としていたスタイルでした。

1歳違いでライバルでもあり友人でもあったショパンの死がリストにもたらした影響は

計り知れません。晩年、リストはショパンのことをこう語ります。「彼と肩を並べる者は

誰もいません。芸術の空には、ただ一人彼だけが光輝いているのです。」




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記念すべきNo.50は、ショパンの「子犬のワルツ」。

これもコロナウイルスの関係で、zoomでの開催となった「第0回、まるネコ堂芸術祭」

に出展した映像からの抜粋です。しばらく色々自粛で気が滅入りますが、めげずに 頑張りたいところですね。


この曲は、子犬が自分の尻尾を追いかけてくるくる回る様子からヒントを得て作られた

というのは有名な話だと思います。くるくると回ってはコロンとこけて、また回って…

とそんな姿が目に浮かびます。

短い曲で、くるくる回るAの部分、少しゆったりとした中間部(B)、

そしてまたくるくる回るAが戻ってきて、最後だーっと駆け抜けて、終わります。

とても小気味の良い小品です。

また、右手の素敵な装飾もこの曲の聞きどころです。

中間部で聞こえるのは子犬の首輪の鈴の音でしょうか。可愛い鳴き声にも聞こえますね?

弾けば弾く程たくさんの魅力を発見できる一曲です。


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